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「新開」
まだ授業中なのにうさぎ小屋の前に座り込んでうさぎに草を与えている新開を見つけた福富は、体育の途中なのにそのまま授業を抜け出してきた。
「やあ、寿一」
新開は顔を上げて眩しそうに目を細めた。
「えさか?」
「うん、それもそうなんだけど、うさぎって寂しいと泣くんだよ」
福富は新開の横の草むらに座り込んだ。
隣で嬉しそうにうさぎを眺めている男がエーススプリンターにはとても見えない。
「お前は?」
福富の言葉に新開が首を曲げて福富の瞳を見つめる。
「ん?なに?」
「お前も」
「泣くよ」
福富の言葉にかぶせる。
新開はうさぎに視線を戻してその小さな首を人差し指でなでた。
「でも今は泣かない。だって寿一や靖友や尽八達がいるからね」
福富はその手を新開の頭の上に乗せる。
「ああ」
その温もりにいつも守られて走ってることは今は黙ってようと新開は思う。
けどこれだけは伝えておきたかった。
「寿一」
「どうした」
「うん」
新開は隣に座る同級生なのに頼りになる男の顔を見つめた。
「ありがとう」
すると新開の頭の上に乗っていた福富の手がくしゃくしゃと新開の赤い髪を乱して離れていく。
「もう泣くなよ」
福富は立ち上がって体育の授業を終えて教室に戻っていく仲間の元に戻っていった。
新開はクスッと笑うとうさぎに顔を近づけた。
「不器用だな、俺たち・・・」
おわり
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